Interview #01
 

橋詰さん、
問屋からお惣菜屋への意外なシフトチェンジ、
その理由は?(友廣)

インタビュー:2013/2/16
橋詰 真司さん 子どもたちが夜1人で歩いても安心な街をつくりたい、そのための事業だから。 インタビュアー 友廣 裕一さん 高田のために、ということをちゃんと見せた上で、誠実な商いをしようとしているから、みんな、何か力を貸せないかって、思うんだろうな。友廣 裕一(ともひろ ゆういち)さんのプロフィール橋詰 真司(はしづめ しんじ)さんのプロフィール
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Q. 震災後すぐ、*高田ドライビングスクール横のテントで朝市を始めたのは?

―震災後すぐに、橋詰さんが「すごい調整」をして朝市を始めた、と*(八木澤商店の)河野社長からお聞きしたんですけど。

橋詰:震災直後、トラックに救援物資を積んで公民館に搬送するということをしていたんだけど、ある日、幼稚園の子ども2人と母親とおばあちゃんが、俺の車の前で手を挙げて、「止まってくれ」と。どうしたのかと聞けば、「子どもがウインナーを食べたい」って言うんだよね。その当時は救援物資として米、カップヌードル、パンは毎日届けられていて、大人は炭水化物だけでも我慢できるけど、子どもたちはやっぱり肉が食いたいんだな。だって今までそれが普通だったんだもん。だけど「ごめんなさい、積んでないんです」と答えなきゃならなかった。公民館には野菜も届けていたんだけど、足りなくて、別の人からは「(貰ったのは)白菜4分の1カット1つだけでした」という話も聞いた。それはすごく衝撃的だった。戦後という感じだよね、まるで。

―食品の卸をされている立場から、これは何とかしなくてはと?

橋詰:危機感だね。取りあえず何でも食べられればいいやと思っていたのが、そうではない現実を見せつけられて。でも、もちろん店はまだどこも再開していない。これが長期的に続いたら、せっかく震災で生き残った人たちが、精神的なバランスが崩れている上に、今度は栄養バランスまで崩れるのではないか。そうなったら本当に大変なことになるなと…。であれば、なんとか商売の形で食品を届けたいと思って、高田に古くからあった朝市を再開させようと。

―避難所にいらっしゃる、もともとお店をやられていた方は、当時みんな「できない」と口を揃えて言っておられた。

橋詰:そう、「無理だ、無理だ」とね。でも俺は、被災している仲間が商売を始めるきっかけになればいいと思ったし、何より、売り手にも生活している人たちにも、「自立」というものを早い段階から呼び戻したかった。救援物資に頼るばかりでなく、自分で見て、嗅いで、聞いて、お金を払って商品を買うという本来の在り方をね。それで、朝市をオープンさせたのが5月1日。商売という形でやったのは、沿岸で多分一番早いと思う。

当時の朝市の様子

―早かったですね。当時、朝市には何店舗くらい出店されたんですか?

橋詰:スタートが11店舗ぐらい。なにしろ5月だったから、まだ誰が生存しているかという状況も全然分からない中で、ただ「生きてた」というのだけがあって。そういうときに、地元にあった店が朝市に出れば、みんな「あー、良かったな」と思うし、商売という意味でも、再開するという決意を見せるだけでお客さんはほっとするんだよね。最初のイベントは飲食店の組合の人たちに手伝ってもらって、6、7店舗が混ざって焼き鳥を焼いたりしてね。そこに行けば笑顔あり涙あり。出店してくれた人たちにもすごく感謝しているし、本当にやって良かったなと思う、期限付きだったけど。

―期限はいつまでと決めていました?

橋詰:半年。朝市の場所は高台にあって不便だったから、周りに店ができてくれば自然と消滅するだろうなと考えていて。予想通り、地元スーパーの*MAIYAさんがオープンして他の店も出てきて、徐々に集客もしぼんできて、そろそろじゃないという感じになって、終わったのは9月。

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橋詰さんはこんな声の人(15秒)

震災前にもひょんな事で出会っていたふたり

友廣:大学を卒業後の2009年、限界集落や過疎地などを訪ね歩く旅をしていた僕は、ある日、陸前高田の手前で車両事故を起こしたんです。そのとき拾ってくれたのが*八木澤商店の河野社長。以後、高田の企業を"たらい回し"にしていただいて、「橋詰さんのとこ、行ってこい」となったのはちょうどお祭の時でした。菓子倉庫にいらっしゃった橋詰さんは、神輿を担ぐ前のサラシ姿で(笑)

橋詰さんのここまでの人生チャート

気仙町に生まれる → 自動車の整備工 → 空白の一年 → クロネコヤマトで配送業 → 橋勝商店入社 → 結婚ムコ入り⇒社長兼任

橋詰さんのお店はこのあたり

橋詰さんのお店、和笑輪までの地図

 

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