Interview #07
 

石木先生、高田病院での活動からみた
これからの高齢者医療のこと、お伺いします。(富山)

インタビュー:2013/04/18
石木 幹人 さん 一次予防は国家的な事業になるに違いないと思うよ。 インタビュアー 富山 泰庸 さん 私も一次予防の観点から、訪問リハビリ事業に取り組んでいます。 石木 幹人(いしき みきひと)さんのプロフィール 富山 泰庸(とみやま よしのむ)さんのプロフィール
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Q. 被災後の医療従事者不足の中で、高田病院は、なぜ訪問診療を続けたのですか?

写真:現在の高田病院現在の高田病院

―石木先生の率いる高田病院は、大変な被災をしながらも、訪問診療を続けていらした。訪問って、病院とは全然違って、相当手間がかかることですよね。それをあえて、少ない医療従事者の町でやっていくということは、本当に難しいことだと思うのですが。

石木:本来は、病院という組織が訪問診療をやるというのは、あまりしないと思うの。本当は外来もなしに出来ればいいんだろうと思う。開業の先生たちが、病床で診なきゃいけない人を見分けて、病院によこしてもらって、病院は病床を守る。それが役割なんだと思うのね。

開業の先生が、患者さんに必要な医療の見極めを頑張ってやってくれれば、高田病院は訪問診療をやらなくて済むんだけれども、なかなかそうも行かない現実がある。だから高田病院では訪問診療をやらざるを得ないのね。患者さんや住民のニーズに応えていくことが仕事なんだから、それは、なんとか上手くやる工夫をして行くしかないのさ。

写真:石木先生

―先生は、在宅で患者さんを看取るということもされていらっしゃいますよね。

石木:県立中央病院(盛岡市)にいた時に、肺がん末期の患者さんを診ることが多くてね。 その頃、肺がんの死亡率は高くて、末期になる患者さんが結構いっぱいいて。県立病院だから、訪問診療なんかやっていないわけだけど、患者さんで、「家で死にたい」というのが出てくるのさ。開業の先生だとか、いろいろ探しても見つからない所もあって、「じゃあ、おれ行くよ」と言って、何人か看取ったんだけど、それは全部、ボランティアなのさ。

医療の仕組みとしては無いことだからお金は取れない。薬だとか、処方しないといけないのは、外来で処方出したような格好にしてさ。一度、雪のすごい日があったな。酒飲んでいたら、「死んだ」と連絡が来て。タクシーで、片道2万ぐらい取られたっけな。帰りはタダにしてくれた、タクシーの運転手。「どうせタダで帰るんだから」と言って。訪問診療代は貰えないし、タクシー代も全部ポケットマネーだった。そんなこともあったりね。

だけどやっぱり、患者さんのニーズに何とか応えていくというのが、医療者の役割なんだから、そういう仕組みを、ポケットマネーじゃなくて、公的な形というか、ちゃんとした形でつくり上げていくというのが、すごく大事な部分なんでない?

―本当にそうですよね。

石木:県立中央病院(盛岡市)だと、組織があまりに大きくて、そういうのをつくるすべは全くなくて、ボランティアで動かざるを得なかったけれども、高田病院には、既に訪問診療の仕組みがあったから、それを少しずつ改革して今がある。「ここの地域は行かない」とか、そういうのを解除するのはすごく大変だったけれど、私が来てから、在宅の看取りもするようにして。
初期のころは看護婦の賛同も得られなくてね。だって、手間がかかるし、大変なんだもの。でも、訪問看護ステーションの看護師たちが、随分積極的にかかわってくれて。訪問看護ステーションの看護師たちと協働で、うまくエンドステージも看取れるような格好になった。

そんなこんなあって、いろいろ在宅関係の人たちが集まれるような、そういう環境ができた。で、高田病院の訪問診療は、今、ようやく花開いてきたかなと。

写真:ドクターカーエコー、心電計、骨密度計、AED、モニターなどが搭載されているドクターカー

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