Interview #07
 
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Q. 高田病院で取り組んできた、高齢者医療とは?

―高齢者を対象に、どんなことをされたんですか?

写真:健康講演会(下矢作コミュニティーセンターにて)健康講演会(下矢作コミュニティーセンターにて)

石木:いろいろあるけれど、まず、さっき言った「病院の役割」というのを理解してもらうために、「健康講演会」というのをひらいて、話して歩く、というのを続けたんだね。「今の医療は細分化されてしまって、医者が足りない。大変困るような状況になっちゃったんだけれども、どうすればいい?」という問いかけと、「みんなが病気にならなければ、一番いいでしょう?」という話をね。
それから、患者さん一人を診療するのに必要な時間を見直した。高齢者って、年齢÷10ぐらいの疾患を持っていると言われているんだけど、そうすると、80歳の人は8科回らないといけないでしょ。でも、それだとみんな大変だから、全部は回らなくても良いような病院づくりをする。高齢者の病気の大体は慢性的な状態になっているから、担当の先生がしっかり状況を把握して、何か変わったことがあったら、そのときに専門の先生の所に送るようにすれば、大勢に影響はないんだね。このことも住民が不安に思わないよう「そういうふうな病院づくりをするよ」と話をして歩いた。

若い人とちがって、移動手段も充分でない高齢者は、自分で症状に合った病院を選んだりすることができないでしょう? だから、そういう人たちにも、いい医療を提供するためには、ここにいる医者がちゃんとフィルターを掛けて、必要な専門の先生の所に届ける役割を持つのは、すごく大事な流れでないかなと思います。

写真:石木先生

―高田のニーズに合った先生の病院づくりは、評判にもなっています。

石木:私は、高田の病院だけでなくて、気仙全体の高齢者を対象にした病院づくりの構想を持っているんだけどね。

高齢者医療って、普通の医療と違って、例えばその人の終末期をどうするのがいいのか、というようなことまで含めて考えなきゃならないのさ。がんの末期だとかとはまた別な部分があるんだね。その辺も含めてやると、結構奥が深いし、疾患単位もすごく大変。

高齢者医療を考えるときにね、私が、最も重要だと思うのは「リハビリテーション」なんです。リハビリは、ほんとにこれから多分、高齢者の医療でメインテーマなんだと思う。
今は、認知症のリハビリとか、がんのリハビリだとかに細分化されてしまって、本来の思想が分かりにくい状況かもしれないけれど、要するに「社会参加を何とか実現する」というのが、多分、リハビリテーションの根本的な考え方なんでないかなと思うんだよね。

リハビリの分野は、PT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)、3つのセラピスト、あとは臨床心理士が心のケアみたいなのに入って、4つ。MSW(医療ソーシャルワーカー)が社会資源の発掘みたいなので、大きくは5つの専門的な職種の人たちで構成されているよね。

でも、その人の持っている問題をしっかり抽出して、本人の意志、あるいはやりたいこと、目標などを把握したうえで、リハビリのスケジュールを立てていくということは、どんな分野にも共通で、必要な考え方なんでないかなと思うんだよね。Rehabilitation Oriented Medicine といえばいいのかな。そういうのは大事なんじゃないかなと思っていて。

老健施設だとか老人ホームだとか、高齢者の受け皿が必要だというのはもちろんあるんだけれども、その前に、リハビリを入れて、生活のレベルが落ちる前の人たちのADL(日常生活動作)をなるべく長く持たせる、という取り組みが必要だと思うんです。そうすれば、高齢者でADLの落ちた人を収容する施設を拡充していかなくても済む可能性は、かなりあるんでないかなと。

写真:玄米ニギニギ体操(下矢作コミュニティーセンターにて)寝たきり防止や認知症予防の為の玄米ニギニギ体操(下矢作コミュニティーセンターにて)

―予防の観点といいますか、健康をもう少し維持する方向でのリハビリの使い方ということですね。

石木:そうです。大きい基幹病院があって、周りに少し小さめの病院があるという地域では、そういう一次予防の役割を、小さめの病院が積極的に担うような動きになれば、恐らくいい形になっていくのではないかなと思っていて。 構想としては、被災する前からあたためていて、賛成してくれた医局のメンバーもいたので、被災していなければ、もっと動けたんだけど。上手く行けば、23年度には新しい病院が立ち上がる話にもなっていたんです。

―残念です。高齢者の専門の医療機関というのは、あまり県や市では運営されていないですね。

石木:全国的に見ても、そんなに数はないのね。国立の長寿医療センターと、東京都の高齢者医療センターかな。ほかにあるかとなると、なかなか。

―高齢者医療センターみたいなものを、例えばここにつくっていこうとするためには、何が必要ですか。

石木:人的なもの以外の問題はあまりないんじゃない。だって、モノが立ち上がって、人が集まって来さえすれば、何とかなる。高齢者の医療にすごく興味を持ってやるよというふうな医者仲間が、高田病院みたいなところなら、3人から4人いれば何とかなる。

あとは、大船渡病院との連携で、自分たちで賄いきれない専門の分野の先生たちが、ある程度定期的にこっちに来て、コンサルテーションなり診療なりしてくれるというふうな格好のことが、日常的に行われるようになれば、実現できるんではないかと。

―やはり人なんですね。

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