Interview #10
 
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Q. 震災後、全国のイベントで売り歩いて、「三陸の流通を変えたい」とは?

―震災のあと、物産センターの仕事は忙しかったでしょうね。

鈴木:この仕事はまだ4年目だけど、震災後に経験した部分があまりにも大きくて。回った業者もすごく多かったし、20以上の都道府県にイベントに行きました。震災の年は、とにかく売らないと会社が潰れてしまう、という状況だったので、がむしゃらに「陸前高田はこういう状況です」と伝えて歩きました。新幹線が動いて、最初に関東に行った高田市民はたぶん私じゃないかと。あの頃は余裕がなくて、あんまりよく覚えていないんですけど。

―全国各地のイベントを回って、売り歩いた。

鈴木:自治体のイベントが多かったです。とにかく、お客さんに泣かれて、泣かれて。「大変だったでしょう」「頑張ってね」と言われて。おばあちゃんが「*マスカットサイダー」を10本も買ってくれたりね。「重いでしょ、それ。絶対、普段だったら買わないでしょう」というのがわかるから、「ありがとうございます」しかない。ぼったくりでも何でも売らなくちゃ帰れない、という必死の思いでイベントにでていたけど、必要もない商品を買ってもらっていることが申し訳なくて、こっちが泣きたい、ほんと、泣きたかった。

―そうした時期から時間が経過して、みんなの関心の持ち方が変わってくるのを感じますよね。それはどんなでしたか。

写真:西村さん

鈴木:2011年のお盆を過ぎたら、ぱったり。あとはもう、良い商品じゃないと売れなくななった。いろんなイベントが企画されるから行くけれども、実際売れない。ひとりでイカやホタテをコンロで焼いて人寄せしたり、つらかったですね。でも、「これが普通なんだよな」という感じで。

―そういう時間の中でいろいろ考えていたんですね。

鈴木:そう、考えていましたね。イベントじゃ食っていけないんだなと。で、やっぱり地元メーカーさんの商品を大量に流すために、とにかく取引先に入り込んで行くことが私たちの仕事なんだ、というところに行き着いて。私たちはフットワークの良さが一番のウリで、例えば、小売店、スーパー、ホテルや飲食店、あとは通販にも対応できる。イベントも大切だけど、加工と流通の間にシェアを広げることが、私たちの本筋じゃないかと思いました。

―売り場の末端の経験から、物産センターが担う役割の本筋に気づき、さらに流通の流れを遡って、今度は水産加工業というメーカーに行くわけだ。

鈴木:そうですね。ちょっと大きな夢になってしまうんですけど、三陸の流通を変えたいというのがあります。

―どういう現状を、どう変えたい?

鈴木:震災後、三陸のワカメなど水産物が前ほど売れていなんです。震災前は三陸産しか扱わなかった事業者さんから、三陸産が手にはいらないので、鳴門産や中国産を使ってみたら「意外と良くて、しかも安い」という反響があって。

―震災をきっかけに?

鈴木:そうです。中国産とか一般的には評判悪いですけど、実はすごくレベルを上げているところはあります。三陸産は確かに立派なものですけど、倍近い値段がしますからね。それで三陸産が動かなくなりました。生産者は無関心というか、あまり知らないんですけれど、これは東日本大震災による風評被害とか風化だとかそういうことではなくて、お客さまの評価です。
高くてもいいものだから売れる、という時代はもう終ってしまったんです。今まで築地一辺倒で出してきた三陸も悪いんですけれど、震災は今までの流通のモデルをひっくり返してしまった。もう、今までのような流通の仕方では、商品は動かないです。

―三陸にとってはすごい経験ですね。

鈴木:そうですね。だから私がやりたいのは、お客さんから「こういうものを作ってくれ」と頼まれた製品を作る、それを仕事にするメーカーさんが増えてくれることです。「うちはこれしか作らないのよ」じゃなくて、お客さまの要望に応えた製品を開発することができる。それで「何だ、三陸の業者さん、やるな」という評判になれば、新しい仕事・雇用を創っていけるんです。

写真:鈴木さん

―流通をただつなぐだけではなくて、顧客とも加工業者とも生産者ともやりとりができる。そういう流通をやってみたいと。

鈴木:そう。事業者さんには「これ作ったんですけど、どうですか?」じゃなくて、「こういうものをつくったら売れるよ」という情報に耳を傾けた上で商品を開発してほしいんです。消費者のことを一番良く知っているのは、売る人たちなので。
私自身も売る側の苦労を経験していますんで、これから水産加工業にはいって、売る側の人たちの声に耳を傾けながら、商品を作っていくという実践ができるんじゃないかと期待しているんですけど。

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