Interview #10
 
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Q.祐輔さんにとって、今の陸前高田は?

―高田に残していく人たちのことを、どんなふうに思っていますか。

鈴木:心苦しいですね。SBN(ソーシャルビジネス・ネットワーク)の方々やメンターの先生方もしかり、「なつかしい未来創造」で出会ったみなさんもしかり。*八木澤の河野さんとは、会長・社長・その子どもたち、3世代との付き合いがあるけど、高田を離れることはまだ言ってないんです。もう言わないと。
あと、東京から高田に戻って*石けん屋「ラフ」をはじめた菅野恵は高校の同級生ですけど、「大丈夫かよ」って心配だし。 剣道を教えている子どもたちもや、震災以降ずっと団結してやってきた消防団の仲間たちを残していくのも心苦しいです。「5年間だけ、休業させて」と言うつもりですけど……。
あとは親を残して行くことも。挙げればキリがないです、心苦しさは。

写真:鈴木さん

―祐輔さんが、今の陸前高田という場所をどういうふうに見ているかということを聞いてみたいです。

鈴木:例えば若者にとっては、まだ魅力のない街。住む人にとってみれば、希望の希の字がまだ重ならないような、そんな街。だけど、夢がある街。
あまりいい例えではないかもしれないけど、ほかの三陸の都市は、交通事故で言えば、例えば車のミラーが壊れましたとか、衝突はしたけどナントカ動きますというような。でも、陸前高田に関しては、エンジン丸ごと取り換えなきゃいけないような事故なので、ある意味、いい機会だと思うんです。前は軽トラだったのが、フェラーリになるかもしれないじゃないですか。車体もエンジンも、これからより良いものにできるんじゃないかなと。
震災前の高田は、松原が有名な観光地で住みやすい街ではありましたけど、良いところばかりだったということはないと思うんです。良くない部分だっていろいろあったはずで。

―良くないと感じているところは、どんなところ?

鈴木:行政にも民間にも保守的なところがあります。世の中がいろいろ変わって前ほど商品が売れなくなったり、後継者が少なくなったりしていても「今のままでいい」ということを選んでしまう民間とか。企業の誘致を受け入れないことで有名な行政も。私、この仕事の前は県職員だったので、行政の内側も見ていて。もちろん全部がダメなわけではないですけど、外からのお金が入ってこない街というか。

―震災があって、外からいろんな人が陸前高田に入って来たことについては?

写真:西村さん

鈴木:まず、ボランティアで来て下さった方々なんかには頭があがらないです。
それから、「こうした方が良い」と何かの提案を持ってくる人たちには、「まずよく見てください、提案はそれからで」と言いたかった。全部じゃないですけど、「今、それ無理だな」みたいなのがいっぱい来たんです。
あとは「イベントに被災地からも出展して欲しい」と言われて行ってみたら、交通費も出ないただの商談会でしかなかったというようなことも結構ありました。陸前高田が大変だ、と関心をもってもらうことはありがたいけれど、私たちも「客寄せパンダ」みたいになるのはつらいんです。

―それはそうですよね...。
Iターン、Uターンの人たちも高田に入ってくるじゃない。仕事をするには条件が揃っていると言い難い、何の保証もない所へ。そういう人たちの動きは、どんな気持ちで見ていました?

鈴木: そういう人たちに関しては、私は冷静な目で見ています。「とにかく始めよう」というのが先に立ってしまって、今後どうするかという展開を考えていない人たちが結構多い。みんながみんなじゃないですけど。「やってからどうするの?」と。私はそのほうが心配です。自分が事業者として商品開発をするなら、売り先があってから作ります。じゃないとリスクが多すぎる。

―継続性に対しての備えがない。

鈴木:そうです。これは恩師からずっと言われていたことですけど、私は何をやるにしても、計画が先に立たないと目標は付いてこないと思っています。目標があっても計画がないと、そこまでたどり着かないんです。メジャーリーガーになるには、そこに行くまでの過程があるわけです。素振り何千本やるとか、ノック1000本やるとか。
みんな、先のことを考えているのかなと思うと、ちょっと怖いですね。

―計画を立てて、ある程度の見通しを持ってやっていく祐輔さんとしては「大丈夫かな?」と感じることが多いと。

写真:西村さんと鈴木さん

鈴木:多いですね。心配。

―ということは、5年後に帰ってきたころには、Iターンの彼も彼女も、もういなくなっちゃっているかも…とか、そんなことを思わずにはいられない?

鈴木:いられないです。だからそれがすごく心残りというか。ちょこちょこ、大丈夫かなと、のぞきに来たいなとは思いますけど。私も、人の心配じゃなくて、自分のことをまずしっかりやらなきゃいけないんですけど、それでも心配ですね。

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