Interview #09
 
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Q. モノは持つよりシェアすることが幸せ?

―ところで、こちらに来て、ボランティアで仕事をするのと、就職して給料を貰うという事との感覚の違いはありましたか?

種坂:そうですね、半年間ボランティアをしていると、稼ぐということがちょっとわからなくなってしまって。何でも「ボランティアでいいや」みたいな気になっちゃうんです。ただ生活は厳しいから、お金は貰わなくちゃ困るんですけどね。私は陸前高田が復興してほしいから働くんだけれども、お金を貰えること自体が奇跡みたいな感じで。最初のころとかお給料もアホみたいに使っていましたね。陸前高田で店ができれば、やたら買い物をして実家に送って
震災以降、貯金欲というか将来のためにお金を貯めることに何の魅力もなくなっちゃったんです。1日にしてすべてが失われることがあるのに、高級なものを買いたいとか、貯めて何かしたいということが、考えられなくなったんですね。なので、「あるものは使え」みたいな感じになってしまって、ちょっと危なかったですね。

写真:種坂さん

―むやみに貯めるのはどうかと思いますが、あまりにも無計画すぎるのも。

種坂:危なかったです(笑)。もともと私、海外に行きたくて、働いている時にちょっとずつ貯金はしていたんです。それを石巻で全部使い切って、貯金額が数千円みたいになった時に「あ、やばい」と気付いたんだけど、その状態で陸前高田に来て、いきなり収入があったので、また使っちゃって、みたいな。でも全然苦しくはなかったんです。だってまだ若いし、いくらでも稼げるし、今は使いたいことに使いたいと思ったんですね、その時は。

―いくらでも稼げるとか、どうにでもなるというのは、こちらに来て以降、感じることだったんですか? 不安は無い?

種坂:何でしょうね。最初の数カ月は、この世の終わりだと思うくらい信じられない光景が広がっていたので、何かに依存していると、きっと、しっぺ返しが来ると思うようになっていました。石巻のある家で、押し入れにたまった土に水をかけていた時に「押し入れに水をかけている、私」と思って。そんなこと、日常生活でないじゃないですか。その時、あまりたくさんモノを持ったり、手に入れたいと思ったり、独占したいみたいな欲はなくなりましたね。執着していた分だけ、なくした時のショックが大きいというのも実感して。だから、必要な人と必要なものだけ近くにあれば幸せかなという。

写真:中村さん

―石巻とか陸前高田で、「宵越しの金は持たない」まではいかないにしても、執着がなくなった、と。

種坂:そうですね、さらに、高田の人たちに触れていく中で、全てのものはみんなが共有しているという感覚がすごくあって。何であれ、それはたまたま手元にあるけれど、いつでも誰かにあげていいものだ、みたいな感覚があるんです。
*橋勝商店の橋詰社長も専務も、何でも人にあげちゃう。自分たちだってお店も流されていて物がなくて、でも、やっと手に入ったいろんなものを惜しげもなく人にあげてしまうんですよね。人が来たら自分の分まで、まずご飯を食べさせる。何かもらったら、そのまま人にあげちゃう。
でも、彼らにはいろんなものが集まってきて、いろんな人が集まってきて、すごく前を向いていけるという状況を近くで見ていて。何かに自分の名前を付けて、自分のものにしてしまうというのは寂しいなと思ったんです。そういう、「他人とモノをシェアすることが幸せ」という状況は陸前高田に来て学んだことですね。

写真:浦浜てくてくマップ橋勝商店に掲げられた言葉

―最低限食べられさえすれば、必要ないものはむしろシェアしたほうが喜ばれるし、嬉しい、みたいなことってありますよね。

種坂:ここは、自然が近いというのが大きいかなと思います。例えば、大昔は夏に稼ぐ人はそれを冬に稼ぐ人にあげて、いったんお金に替えて夏にこれだけのものをあげたから冬にもらえた。もともとお金ってそういうものだったのかなと思うんですね。その場で「やったり取ったり(物々交換)」ができないときに、取りあえず証しとしてお金があった。だから、今持ってるものは自分のものじゃなくて、世の中のものというか、自然の一部であって、みんなのものなんだ、と言う考え方は結構、楽になる部分が多いです。
こっちの人たちは、季節ごとに、サンマがアホほど捕れるときは、毎日サンマをいろんな人に配ります。ワカメの季節はワカメを配り、冬はカキやリンゴ、今だと山菜、夏はホタテという具合で、モノが貨幣みたいになっていて。私も「絵を描いて欲しい」と頼まれて、似顔絵を描いて渡したら、ちょっと予想はしていましたけど、リンゴをもらったり。

写真:種坂さん

―あ、ちょっと予想していたんですね(笑)。

種坂:そうなんです。だんだん分かってくるんですよ。きっと、この漁師さんのとこだったら、この時期だったらワカメもらうかな、みたいな。しゃぶしゃぶの用意しておくかな、みたいな(笑)。

―その「分かってくる」というのは、いいですね。

種坂:はい(笑)。

―前にインタビューしたときより、普通に角が取れて、丸くなった感じがします。前はすごく気負っていた?

種坂:あのときはまだ、孤軍奮闘というか、めちゃくちゃ悩んでいましたからね(笑)。今は仲間がいて、みんながどうして行くのか、高田がどう復興していくのか、ここで見届けたいと思っています。

写真:種坂さんと中村さん

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インフォメーション

陸前高田物産センター

岩手県陸前高田市高田町字大石沖3-8

陸前高田のうまいもの たがだ屋(陸前高田物産センター通信販売サイト)

電話番号:0192-54-3950
営業時間:毎日9:00〜18:00
ネットショップもご利用いただけます!

「中村 健太」さんと「種坂 奈保子」さん

前は嫌いだった「デザイン」の仕事をしてワカメとかリンゴとかをもらえてしまう。それってどんな感じ?(中村)

種坂さんが働く 陸前高田物産センターはこのあたり

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